2009年11月6日金曜日

オリーブ・バールのアリス


大学祭は4日までだったので、5日は授業があると思い、鶴橋へ。
東京から出てきたばかりのときは近鉄線の長い電車間隔に驚愕したが、ここのところその間を利用して構内のドトールで朝食を食べるのが、授業のある日の日課になっている。コーヒーをゆっくり飲むほどの時間はないので、彩り野菜のカルツォーネだけ食べて、電車の中でテイクアウトのソイラテを啜っていると、周りがいつもより落ち着いたおじさんたちである。先生かな、と呑気に考えていると、急に、おじさんが乗っているのはともかく、学生がいない、という異常事態の意味に気づく。

も、もしかして今日って、休み?

慌ててLet's Noteを出し、大学のホームページから学年暦を検索。
11月5日 創立記念日。
うわ、そうだったのか。そう言えば、例年、学祭のときって、1週間以上くらい休みのはずなのに、、
と思ってはいたのだった。
しかし、今日は2時から元町のCHESTに髪を切りに行く予約を入れたので、家には帰れない。
どうしよう、と思いながら、とりあえず駅で降りて歩いていると、美容院の予約の時間を
早めてもらう、という案が浮かび、神戸方向へ引き返した。予約は1時になった。
変更の電話を入れてから、そうだ、映画館に行けばよかったのだ、こういうアクシデントが
あったときにふらっと入ると、結構いい映画をやっていて得をするのに、と後悔したが、すでに遅し。
1時間半強の時間を、どこかで潰さなければならなくなった。
とりあえず元町で降り、ランチすることにして、ウロウロ。
有元葉子プロデュースの、オリーブ・バールというレストランがあったので、入ってみることにした。
料理研究家の有元さんは結構ファンで、本も何冊か持っている。ラ・バーゼの調理器具も使っている
から、レストランでも「あ、これ持ってる」、というのが、使われていたり売られていたり。

オーダーしたのは、1日20限定のフォーシーズンランチ、秋バージョン。
メニューは、


バニラ風味の南瓜プリンと秋野菜のマリネ
コンソメジュレ添え
ほんのり唐辛子を効かせた自家製タリアッテレ
じっくり炒めた飴色玉葱ソース
栗のペーストを詰めた淡路地鶏のロースト
白トリュフ風味
秋野菜のジェラート
バゲット 紅茶

イギリスの有名シェフに、料理でいちばんおいしいのは前菜だから、前菜だけのレストランを開いた、という人がいたけれど、わたしも同じ意見で、今回もそうだった。
南瓜のプリン+野菜のマリネ+コンソメジュレという組み合わせは絶妙。おいし~♪
(前菜の写真は撮り忘れたので、写真はメインの地鶏のロースト。上方にあるのはお店のサイトより、コース全部の写真)

待っている間読んでいたのは、柳瀬尚紀訳の『不思議のアリス』。
今更なのだが、また読み返す必要を感じたのだ。
この本、徹頭徹尾、幸せになるために書かれている。
トランプの国の女王様は、二言目には「処刑せい!」と言う。
それなのに「おかしいやな!」と笑っているグリフォンは、
「ぜんぶ空想しているだけなんだ、誰も処刑されたりはしないのさ」
とアリスに言う。それから胸が張り裂けんばかりに溜息をついている
海亀フーを見てまた、グリフォンはアリスに繰り返す。
「ぜんぶ空想しているだけなんだ。なにも悲しいことなんかありはしないよ」

朝は『荘子』の斉物論編を拾い読みしていたのだが、それとも通じる世界が
ここにある。「…みせかけの対立を、天倪によって和合させ、自由無碍の境地
のうちに包含することこそ、真に永遠に生きる道なのである。
こうして、歳月を忘れ、是非の対立を忘れ、無限の世界に自在にふるまうことが
できる。これゆえにこそ、いっさいを限界のない世界――対立のない境地におくのである」。
ドードーの説明するコーカス競争は、直線ではなく円の競走路で行われる。
全員は、同じ位置ではなく、コースのあっちこっちにスタンバイする。
「よーい、どん!」の合図はなくて、みなが好きなときに走り出し、好きなときに
やめる。もちろん誰が一等なのかはわからないから、みんなが一等だ。
議論の対立というのは、結局気まぐれな主観から生じたものである。
何が是で何が非だという区別がないのであれば、誰が一等だということもない。
人生の苦難も、結局変わった夢を見ていたに過ぎないということになる。

しかし、同じ夢を見るのなら、ほんわかと愉しい夢をみて、happyになりたいもの。
外食ついでに夕食は近所のバリレストランにふらふらと入ってしまい、ヒアルロン酸
ジェリーのかかった海鮮サラダを食べた。何だかジェリーづいている。
クラゲと茸の付き出しも、なかなかおいしい。
ゆっくりお風呂に浸かりながら、アリスを読み終えた。

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